全20作品紹介完了!
よっしゃ、これで完璧!(のはず)
どうも、えりくらです。
コミケまで残すところ後一日です。準備をされてる方はお疲れ様です。明日一日空いて29日より冬の祭典もスタートですね。僕はわけあって草大会出展日の最終日しか参加できないので少し損した気分なんですが、まぁしょうがないということよ。
ここまで紹介してきた20作品を一冊の本にまとめた『SYNCRONIZED ROCKERS -Tribute to Little Busters!-』を皆様にお届けするまで後三日。素晴らしい作品を寄稿していただいた執筆者の皆様、これまた素晴らしいイラストで本を彩っていただいた絵師の皆様、日頃より草を眺めていただいている皆様、それぞれのおかげで、この本はどこに出しても恥ずかしくない凄い本になったと勝手に自負しております。マジで楽しみにしててください。なんて言ってる僕が一番楽しみなのかもしれませんが(汗
これで一応このブログの役目もほぼ終わったわけなんですが、今回のコミケ関係のことで、何か思いついたらまた書くかもしれません。
ではでは皆様、大晦日にお会いしましょう!
20 初夏が終わる 【 広瀬凌 × 天野拓美 】
唯湖は不思議な夢を見た。初夏の放送室、夏服を着た自分が誰かをずっと待っている夢だ。
一方、目が覚めると何故か葉留佳が炬燵で寝ていた。いつの間にか腐れ縁になっていた彼女と昨日の鍋を突いていると、どうも葉留佳も同じような夢を見るという。
なぜ、夢を見るのか。他の皆も、夢を見るのか。彼女たちは年末、久しく会っていないリトルバスターズとの忘年会の際、現実を知る。
19 迷い猫 【 えび × はにょ 】
にゃーんと猫は鳴いて、鈴はぶすぶすと機嫌が悪かった。炒飯ばかりを量産し続ける鈴の背中を、理樹は猫と一緒になって見つめていた。機嫌が悪いのは猫のせいではないのだろう。それは鈴もわかっているようで、だから、機嫌が悪い。
「最近、機嫌悪いね」
「誰のことだ?」
「鈴のことだよ」
ここのところの小雨続きの天気のように鈴の機嫌も斜めに傾いていた。理樹がカフェテラスについたときにはカレーをすでに食べ終えてしまっていたり、そもそも来ない日もあった。図書館で昼寝をする急務があったとか理由は酷いもので、詰まるところ、機嫌が悪いときの鈴だった。以前、お気に入りだったらしいアイスを勝手に食べてしまったときもこんな感じになっていた。もちろん、その時よりも今回の方が機嫌の悪い期間はずっと長い。
「機嫌、悪くなんてないぞ」
「そう?」
目線を横にそらしながら鈴はカフェオレをちびちびと飲んでいく。カップを置くのを待ってから理樹は言葉を続けた。
「この前、鈴の家に行ってからだね」
機嫌悪いの、と言うと、軽く睨んだ視線が飛んでくる。
(迷い猫/P340)
機嫌の悪い鈴はぽつんと見知らぬ袋小路に追い込まれた猫のようで。でも、迷っているふうに見える猫が本当に迷っているかなんて、誰がわかるだろう? 猫の鳴き声にまみれた部屋で、強くなるってどういうことなんだ、と機嫌の悪い鈴は訊いた。――猫と一緒だ。
つよいかつよくないかなんて、誰がわかるだろう?
「あたしも」と頷きながら鈴は言った。「よくわからん」 (迷い猫/P347) |
18 能美クドリャフカの21世紀風景戦争 【 匿名希望(28、リーマン) 】
能美クドリャフカは遠いテヴアで銃殺された――はずだった。
しかし、直枝理樹はあるとき一本の動画ファイルを目にする。
どこかの国の景色の中で、幻のように一瞬だけちらつく彼女の面影。
テヴアの混乱を生き延びたクドリャフカはこの世をさまよっていた。
ひとりで生きる彼らの瞳に映るのは21世紀の風景……。
理樹はSleipnirを立ち上げ、YouTubeへアクセスした。ブックマークからfarewellimagesbyknというユーザーの動画リストを開く。
たまたま見つけた動画だった。約六分間にわたって、モスクワの寒々とした街並みがモノクロで記録されている。それだけの動画のはずだった。アップロードされてから一年以上が経過していた。再生回数は極端に少なく、コメントは一切なかった。ユーザーからの説明もなく、『Moscow』というファイル名から、そこがモスクワであるということがわかっただけだった。理樹はその動画をつぶさに観察した。わずかな瞬間だった。雑貨屋の店頭が映されるとき、窓ガラスに撮影者が映り込んでいた。小柄な女だった。帽子をかぶっている上にカメラを構えているから顔まではわからなかった。
しかし理樹は、その女がクドリャフカだと直感した。knは彼女のイニシャルだった。そして彼女が死んだことも理解した。遺書。アカウント名がそれを宣言している。
17 スパイダーリリー 【 橘 】
全てを失い、学園を追われるように去っていく葉留佳。
そんな彼女が、最後に出会ったのは二木佳奈多、かつての姉の幻だった。
冷たく優しい雨の中、宿命に呪われた姉妹が織り成す、幸福で無惨な物語。
「次に起きたら、あなたがこれまで大切にしてたもの、全て切り捨てなさい。直枝理樹も、リトルバスターズの人たちも、全部。そして私だけを見なさい。あなたには、私以外は何にも必要ないの。あなたの全ては、私だけのものだから」 (スパイダーリリー/P296) |
【作者コメント】
はじめまして。
『スパイダーリリー』の文章/挿絵を担当させていただきました、橘と申します。
アクションもお色気も無い、地味で暗いお話ですが、楽しんでいただけたら幸いです。