お疲れ様でした!

 遅ればせながら、あけましておめでとうございます!

 草大会が出展させていただきましたCM77も無事に終了し、主催もどき(笑)としては、ほっと胸を撫で下ろす思いでした。売り子の手伝いをしていただいた執筆者の皆さん、素晴らしい絵で草本を盛り上げていただいた絵師の皆様、なにより当日草本を手にとっていただいた方、本当にどうもありがとうございました!

 今後の予定はまだ決まっていませんが、どこかで委託をお願いしようかという話になっていますので、正式に決まり次第また報告させていただきます。

 それでは、引き続き草をよろしくお願いします!

 ではでは、またどこかでお会いしましょう。

全20作品紹介完了!

 よっしゃ、これで完璧!(のはず)

 どうも、えりくらです。

 コミケまで残すところ後一日です。準備をされてる方はお疲れ様です。明日一日空いて29日より冬の祭典もスタートですね。僕はわけあって草大会出展日の最終日しか参加できないので少し損した気分なんですが、まぁしょうがないということよ。

 ここまで紹介してきた20作品を一冊の本にまとめた『SYNCRONIZED ROCKERS -Tribute to Little Busters!-』を皆様にお届けするまで後三日。素晴らしい作品を寄稿していただいた執筆者の皆様、これまた素晴らしいイラストで本を彩っていただいた絵師の皆様、日頃より草を眺めていただいている皆様、それぞれのおかげで、この本はどこに出しても恥ずかしくない凄い本になったと勝手に自負しております。マジで楽しみにしててください。なんて言ってる僕が一番楽しみなのかもしれませんが(汗

 これで一応このブログの役目もほぼ終わったわけなんですが、今回のコミケ関係のことで、何か思いついたらまた書くかもしれません。



 ではでは皆様、大晦日にお会いしましょう!

20 初夏が終わる 【 広瀬凌 × 天野拓美 】


初夏が終わる 【広瀬凌×天野拓美】




 唯湖は不思議な夢を見た。初夏の放送室、夏服を着た自分が誰かをずっと待っている夢だ。
 一方、目が覚めると何故か葉留佳が炬燵で寝ていた。いつの間にか腐れ縁になっていた彼女と昨日の鍋を突いていると、どうも葉留佳も同じような夢を見るという。
 なぜ、夢を見るのか。他の皆も、夢を見るのか。彼女たちは年末、久しく会っていないリトルバスターズとの忘年会の際、現実を知る。



 それからの集まりは、本当に有り体に言ってしまおう、楽しかった。懐かしいメンバで酌み交わす酒は美味かった。葉留佳くんとの二人酒は酸っぱさが漂ってそれはそれで良いけど、この何とも言えない甘さや、くだらなさ、郷愁みたいなものは多分人数がいないと出せない。それは葉留佳くんも同じだったようで、ついつい飲み過ぎてトイレへの道程、途中で力尽きてぶちまけていた。私は節度を持って、きちんとトイレで吐いた。(中略)
「恭介くんとこまりんは良いんです。でも何で謙吾くんとみおちん、真人くんとクド公までなんかちょっと良い雰囲気になってやがりますか! 錯覚じゃないですよねあれ!」
「でなければ我々二人だけこんな醜態をさらしていまい」
 そりゃ懐かしいメンバと飲むのは楽しいが、時折訪れる孤独の瞬間に私と葉留佳くんが耐えられるわけもなく、酒量が限界を超えるのは容易かった。
「私、思うんですけど。ひょっとして夢見てるのって、私と姉御だけなんじゃないです?」

(初夏が終わる/P363)

19 迷い猫 【 えび × はにょ 】


迷い猫 【えび×はにょ】




 にゃーんと猫は鳴いて、鈴はぶすぶすと機嫌が悪かった。炒飯ばかりを量産し続ける鈴の背中を、理樹は猫と一緒になって見つめていた。機嫌が悪いのは猫のせいではないのだろう。それは鈴もわかっているようで、だから、機嫌が悪い。

「最近、機嫌悪いね」
「誰のことだ?」
「鈴のことだよ」
 ここのところの小雨続きの天気のように鈴の機嫌も斜めに傾いていた。理樹がカフェテラスについたときにはカレーをすでに食べ終えてしまっていたり、そもそも来ない日もあった。図書館で昼寝をする急務があったとか理由は酷いもので、詰まるところ、機嫌が悪いときの鈴だった。以前、お気に入りだったらしいアイスを勝手に食べてしまったときもこんな感じになっていた。もちろん、その時よりも今回の方が機嫌の悪い期間はずっと長い。
「機嫌、悪くなんてないぞ」
「そう?」
 目線を横にそらしながら鈴はカフェオレをちびちびと飲んでいく。カップを置くのを待ってから理樹は言葉を続けた。
「この前、鈴の家に行ってからだね」
 機嫌悪いの、と言うと、軽く睨んだ視線が飛んでくる。


(迷い猫/P340)



 機嫌の悪い鈴はぽつんと見知らぬ袋小路に追い込まれた猫のようで。でも、迷っているふうに見える猫が本当に迷っているかなんて、誰がわかるだろう? 猫の鳴き声にまみれた部屋で、強くなるってどういうことなんだ、と機嫌の悪い鈴は訊いた。――猫と一緒だ。
 つよいかつよくないかなんて、誰がわかるだろう?



「あたしも」と頷きながら鈴は言った。「よくわからん」
「そっか」
「だから、勝負しよう」
 鈴はボールを理樹の前に突きつけてそう言って、理樹はぽかんとした阿呆な顔を浮かべた。さっき渡されたバットを両手に持ち直す。
「勝負?」
「わからんなら、逃げるんでも知らん振りするんでもなくて、せめて勝負だ」

(迷い猫/P347)

残すところあと

 一回となってしまいました。

 今回で18作品。20作品まであと2作品。

 読んでみたい作品はありましたか?

 もしそれが一つでもあったなら、そして大晦日にスペースに足を運んでいただけたなら、こんな僻地であーだこーだわめいている連中の猛りも報われるという物であります。

 あと一週間を切りました。

 待ってるぜ、みんな!

18 能美クドリャフカの21世紀風景戦争 【 匿名希望(28、リーマン) 】


能美クドリャフカの21世紀風景戦争 【匿名希望(28、リーマン)】




能美クドリャフカは遠いテヴアで銃殺された――はずだった。
しかし、直枝理樹はあるとき一本の動画ファイルを目にする。
どこかの国の景色の中で、幻のように一瞬だけちらつく彼女の面影。
テヴアの混乱を生き延びたクドリャフカはこの世をさまよっていた。
ひとりで生きる彼らの瞳に映るのは21世紀の風景……。

 理樹はSleipnirを立ち上げ、YouTubeへアクセスした。ブックマークからfarewellimagesbyknというユーザーの動画リストを開く。
 たまたま見つけた動画だった。約六分間にわたって、モスクワの寒々とした街並みがモノクロで記録されている。それだけの動画のはずだった。アップロードされてから一年以上が経過していた。再生回数は極端に少なく、コメントは一切なかった。ユーザーからの説明もなく、『Moscow』というファイル名から、そこがモスクワであるということがわかっただけだった。理樹はその動画をつぶさに観察した。わずかな瞬間だった。雑貨屋の店頭が映されるとき、窓ガラスに撮影者が映り込んでいた。小柄な女だった。帽子をかぶっている上にカメラを構えているから顔まではわからなかった。
 しかし理樹は、その女がクドリャフカだと直感した。knは彼女のイニシャルだった。そして彼女が死んだことも理解した。遺書。アカウント名がそれを宣言している。


能美クドリャフカの21世紀風景戦争/P314)

17 スパイダーリリー 【 橘 】


スパイダーリリー 【橘】




 全てを失い、学園を追われるように去っていく葉留佳。
 そんな彼女が、最後に出会ったのは二木佳奈多、かつての姉の幻だった。
 冷たく優しい雨の中、宿命に呪われた姉妹が織り成す、幸福で無惨な物語。



「次に起きたら、あなたがこれまで大切にしてたもの、全て切り捨てなさい。直枝理樹も、リトルバスターズの人たちも、全部。そして私だけを見なさい。あなたには、私以外は何にも必要ないの。あなたの全ては、私だけのものだから」
 あはは、凄いこと言うね。でもお姉ちゃんとなら、私は二人きりでも構わないですヨ。
 私は想像してみる。お姉ちゃんと二人だけの世界を。

(スパイダーリリー/P296)


【作者コメント】


 はじめまして。
『スパイダーリリー』の文章/挿絵を担当させていただきました、橘と申します。
 アクションもお色気も無い、地味で暗いお話ですが、楽しんでいただけたら幸いです。