20 初夏が終わる 【 広瀬凌 × 天野拓美 】


初夏が終わる 【広瀬凌×天野拓美】




 唯湖は不思議な夢を見た。初夏の放送室、夏服を着た自分が誰かをずっと待っている夢だ。
 一方、目が覚めると何故か葉留佳が炬燵で寝ていた。いつの間にか腐れ縁になっていた彼女と昨日の鍋を突いていると、どうも葉留佳も同じような夢を見るという。
 なぜ、夢を見るのか。他の皆も、夢を見るのか。彼女たちは年末、久しく会っていないリトルバスターズとの忘年会の際、現実を知る。



 それからの集まりは、本当に有り体に言ってしまおう、楽しかった。懐かしいメンバで酌み交わす酒は美味かった。葉留佳くんとの二人酒は酸っぱさが漂ってそれはそれで良いけど、この何とも言えない甘さや、くだらなさ、郷愁みたいなものは多分人数がいないと出せない。それは葉留佳くんも同じだったようで、ついつい飲み過ぎてトイレへの道程、途中で力尽きてぶちまけていた。私は節度を持って、きちんとトイレで吐いた。(中略)
「恭介くんとこまりんは良いんです。でも何で謙吾くんとみおちん、真人くんとクド公までなんかちょっと良い雰囲気になってやがりますか! 錯覚じゃないですよねあれ!」
「でなければ我々二人だけこんな醜態をさらしていまい」
 そりゃ懐かしいメンバと飲むのは楽しいが、時折訪れる孤独の瞬間に私と葉留佳くんが耐えられるわけもなく、酒量が限界を超えるのは容易かった。
「私、思うんですけど。ひょっとして夢見てるのって、私と姉御だけなんじゃないです?」

(初夏が終わる/P363)