10 さようならマクガフィン 【 アルエム 】


さようならマクガフィン 【アルエム】




 夢だったコスモナーフトの養成学校を卒業したクドリャフカは、学生の頃慣れ親しんだ町を再び訪れる。あれからほんの少し。たったそれだけで変わってしまう景色、気持ち。晴れない気持ちを抱えたクドは、自分を呼んでいる声に振り返る。そこにいたのは嘗ての級友、西園美魚三枝葉留佳。その偶然の出会いの中でクドは、昔のこと、これからのことを振り返っていく。

 会いたいか、会いたくないか、それが二人の距離を決めるのです。
 だったら私は会いたい。けれど、私達の距離は遠すぎる。瞼の裏側のように暗い世界では二人の顔さえ判別できない。見分けられない。ドアの上部につけられた時計を見る。時刻は22時。もうすぐ今日が終わる。明日になれば私はテヴアに帰る。夢だった。憧れ続けた夢だった。なのに、眠りたくない。
 今日が明日に変わってしまうのが、ただ……怖かった。


(さようならマクガフィン/P172)